山梨県の地場産業へ貢献するために

地場産業へ貢献するために

東日本大震災後、地場産業へ貢献することを最大の目標に位置付けて創業しました。
山梨県の地場産業は宝飾産業というのを知ったのもこの頃でした。

これまでC言語というプログラム言語でシステムを動かすような仕事を主にしてきました。他社製品の調査報告書、特許調査・提案書、ソフトウェアのシステムの仕様書、設計書、検証レポートなど文章も沢山書いてきました。
前職では上記の他に、ホームページ制作、資材(発注や売掛・買掛)業務、経済産業省のものづくり補助金の担当などもしました。

私が培ってきたことを、ここ山梨の宝飾産業でどのように活かせるのか、貢献できるか、インターネットで情報を収集し、調査しました。当時はまだホームページをうまく利用されていない企業が多くみられ、まずはホームページの新規制作、リニューアルの提案を考えました。しかし、文章は書けても「写真」は・・・??

山梨県のイメージ:富士山

甲府で商品撮影できる会社を探しましたが当時は期待する品質の写真はすべて東京の企業が撮影していました。山梨でホームページを作るのにわざわざ東京の会社に撮影をお願いするのか、それなら自分たちでいいものを撮ろうとなりました。ここから撮影システムの開発がはじまりました。

私と杉本はエンジニアでした(今もそうですが)。パソコンで物を制御したり動かすことが得意で、システム化することに長けていました。システムの仕様・機能を検討するにあたり、視点を世界に向け、英語圏を含めたインターネットにあるジュエリーに関する様々なコンテンツを調査し、ユーザー(見てくれる人)にとって魅力的なコンテンツを探りました。

調査の結果、ジュエリーが360度回転する写真や、動画のコンテンツを海外のECサイトで見つけ、ジュエリーを魅力的に見せることができる機能や品質のベンチマーク(基準)に位置づけました。これらのコンテンツの撮影・制作に必要な機能を仕様書に盛り込み、撮影システムのソフトウェアの設計をしました(機械設計は外注)。

さらに、この撮影サービス事業の実現性、独自性、成長性など第三者にとってどのように見えるのかを知り、創業に値するか客観的に確認するため、やまなし産業支援機構のみらいファンド「開業資金助成事業」に応募しました。事業のプレゼンテーションで、審査員の方々から経営の在り方や事業の進め方など貴重なご意見をいただき、最終的に採択を受け、2011年秋に創業しました。

創業支援のための資料と採択通知書

マイナスからのスタート

恥ずかしい話ですが、創業当時、撮影に関しては無知でした。一眼レフカメラは撮影システムの開発で初めて購入しました。撮影システムが出来上がれば綺麗な写真が撮れると根拠無く信じていました。もちろん単純に写真を撮ったり、回転台を回したりすることはできます。しかし綺麗で美しい商品写真が撮れるかどうかはライティングの知識・技術によります。回転台とカメラの制御システムが出来上がり、いざ撮影してみると、ライティングの知識が無いのでひどい写真しか撮影できませんでした。まさにゼロを通り越してマイナスからのスタートでした。

どうすれば綺麗な写真が撮れるのか、ライティングの知識のない我々にとって唯一のよりどころは科学的に物事を見る目をもっていたことでした。まず科学的視点で指輪の動画に映っている反射部分を分析しました。具体的には、金属は反射物なので周りにあるものを映します。金属への映り込みや光のグラデーションの作り方について仮説を立て、実験し検証する作業を繰り返しました。そうすることで、商品と照明との距離感、必要な光量や方向、映り込ませるものの大きさなど理解が深まっていきました。ただし、360度回転させてのライティングですから、静止画1枚綺麗に撮影するより難易度は高く、システム化するのに大変苦労しました。

現象の理由が分かると次回同じ条件にすれば再現できます。その定性的な作業を積み重ね、定量的な改善をシステムにフィードバックし、創業から1年後にようやく納得できる品質の動画が撮れるようになりました。その時期に気が付いたのですが、ベンチマークにしていた海外の動画は実はCG(コンピュータグラフィック)で作られていました。結果的に、従来の実写動画の品質をはるかに超えたクオリティの動画を撮れるようになっていました。

初めて納得のできる品質に至った指輪の動画

世界トップクラスの映像品質を背景に

開業当初は異業種から宝飾産業への参入という立場で、業界に知り合いが誰もいない状況だったこともあり、当然ですが山梨県内、特に甲府での営業は非常に困難でした。世界トップクラスの映像品質を提供できる技術をもっていることが我々の存在価値を示す唯一のよりどころでした。

実績を積み上げるために、山梨にこだわらず、インターネット経由で写真や動画を見てもらい、ジュエリーに関係する人で撮影に困っている人や新しいことに興味のある人をターゲットに活動し、徐々にサービスを利用していただけるようになりました。現在はテレビ通販番組やECサイトの商品撮影など利用用途は拡大しています。

クライアント様からのご要望に応えるために撮影システムの改良も行っています。日々改良できるのは自社でシステム開発した強みです。写真、動画、360度回転画像(360VIEW)等の品質の高いコンテンツをご要望に沿って作れることで、起業前にやろうとしていたホームページ制作も受注できるようになりました。

山梨には様々な色や形の宝石を使ったり、複雑で繊細なデザインのジュエリーを取り扱う企業が沢山あります。現在は地場産の企業からの撮影依頼も増えています。2016年5月、山梨日日新聞の取材を受け、多焦点合成を使用した写真撮影の技術を新聞で取り上げていただきました。

撮影技術の進歩性が確認されたことで2017年7月撮影システム及びプログラムの特許権利が認められました。美しいジュエリー動画を実現するオンリーワンの技術を向上させて、お客様にとって価値のあるサービスになるよう発展させていきます。

特許証-グリーンベーダー2017

創業当初目標としていた地場産業の発展、国内の宝飾業界の発展に貢献できることをうれしく思います。これからも美しい商品を美しく撮る技術を向上させて、引き続き貢献できるよう努めてまいります。

 

タンポポの咲く野原のイメージ画像